雑草魂

映画とか芝居とかライブとか美術展とかの感想

TRASH MASTERS「殺人者J」

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いやー、今回も時事ネタ情報量半端ないし情報濃かったし重かった。傭兵派遣ビジネスと先進国の倫理観の崩壊がテーマということで、いつもに増して主語の大きい、概念的なセリフが多く、相当観る人を選ぶ内容だった。何を好き好んで快晴の休日昼間にこんな重いストレートプレイを観に行くんだか…。お尻が痛くなるようなパイプ椅子席で休憩なしの2時間半、満席状態の場内はかたずをのんでみつめる。モラルとは何?中津留氏からの問いかけ、飛び交う議論、涙、鼻水、涎にまみれての役者の熱演。

舞台は、とある警備会社のオフィス。傭兵派遣事業立ち上げを検討中。海外に住む日本人を守るために外国人傭兵を派遣したい社長、反対している専務の息子、社長に恩義がありノーと言えないイエスマン社員、社長の元愛人に自主退職を迫る社員、空気を読んでハッキリとした意見を言わない社員らが、倫理とは?正義とは?法とは?討論を繰り広げる。そして最終的には多数決をとることになる…。 あらすじをまとめると、これの何が面白いのか全く伝わらない感じなのが残念。この劇団の芝居の一番の魅力は熱く繰り広げられるディベートのかけあいにあるので、この魅力は観ないとわからない。

限りなく最新の情勢が盛り込まれるところがさすが。普通、芝居の脚本というのは最低でも2〜3週前くらいには書き上げられているものだ(それでも遅いとは思う)と思うのだけれど、この公演、7/14初日の公演なのに、冒頭から7/10の選挙の話や、7/1のバングラデシュのレストランテロの話。ギリギリまで脚本加筆があったのだろう。作家魂。(役者さんは大変。。。)

最後の最後、多数決のシーンからの客席に「意見を問う」演出にハッとさせられた。お客として傍観していた芝居の議題は、実は私達一人一人の一票の意思表示を問う問題なのだと。中盤やや冗長な部分はあったものの、この終盤に立ち会えるだけで十分収穫。現代のブレヒト劇といってもいいかもしれない。

(7月14日〜24日 下北沢駅前劇場。上演時間2時間半)