雑草魂

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カラヴァッジョ展

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先日行って来たカラヴァッジョ展が大変劇的で面白かった。

「あたかも映像のように人間の姿を写実的に描く手法と、光と陰の明暗を明確に分ける表現は、バロック絵画の形成に大きな影響を与えた」(wikipedia

ということで、そもそも光と陰影の差が激しい作品なのに、それをさらに、解説読みづらいくらい薄暗〜くした会場で(絵画内の光源方向に合わせて)下から照明で煽ってたりする見せ方なので、輪をかけてドラマチックに楽しめる展覧会なのだ。

大袈裟なほど表情豊かな肉体は見る者を引きずり込むような臨場感に満ちていて、モチーフは宗教画が多いのに、非キリスト教徒の私が見ても心揺さぶられ心乱される。

絵画内の人物の光と影は、後期になればなるほどデフォルメされてゆき、「エマオの晩餐」のキリストなんて普通の前明かりで飽き足らず、S.S(エスエス=ステージサイドスポット。効果キツいので乱用しない方がいい。)で舞台袖の真横からガツンと顔を狙い撃ちしているとしか思えない光が当たっている。そしてそれが素晴らしい。

有名なバッカスの絵、それほど期待していなかったのに実際に目の前で見てみてると求心力がすごい。吸い込まれるような色気。差し出されたグラスのぶどう酒を一緒に飲んでいるような気分でしばらくぽーっと見つめてしまった。

しばらく見入ったといえば「エッケ・ホモ」も人物それぞれに妙な魅力があり、目が離せないようななにか魔力があった。 メデューサは、思っていたより小さかった。

法悦のマグダラのマリアは、美しい作品だけど、どうなんだろう? カラヴァッジョぽくないような? 天才画家カラヴァッジョ、展示されていた裁判の記録文書によるとかなりのクズだったよう。

一番クズだなと思ったエピソードが、料理屋でバター炒めと油炒めを数皿注文したカラヴァッジョ、料理を持ってきた店員にどれがバター炒めでどれが油炒めかと尋ねたところ、店員に「バター炒めは香りでお分かりでしょ」と返されたのに激怒し、店で大暴れして裁判沙汰…。現代もいるよなあ、こういう酔客。キレる原因もくだらなくて小物感が溢れていてさすが。

カラヴァッジョ展の後、常設展も覗いて見たけれどカラヴァッジョの後ではどれを見てもしらじらと淡白に感じてしまうほど。ああもうお腹いっぱい。満足満腹。

国立西洋美術館「カラヴァッジョ展」
2016/3/1〜6/12