映画「BOY A」
「罪」は、いつか赦される日がやってくるのか?
この映画が扱っているテーマは非常に重い。
「罪」は、いつか赦される日がやってくるのか?
「犯罪者」は刑期を終えれば赦され社会から受け入れられるのか?
刑期を終えた凶悪犯罪の加害者にプライバシーはあるのか?
大半の人が凶悪な犯罪者にはたとえ刑期を終えて更正したとしても、隣人にはなって欲しくないと考える。隣人になって欲しくないから、社会に出てきた罪人がいまどこにいるのかを世間は懸賞金をかけてでも知りたがるのだ。
「悪魔」などと恐怖を煽る記事を書くマスコミにも問題があるし、自分の周りさえ平和であればそれでいい、厄介者はどこかへ行って欲しいと願う市井のの人々にも問題がある。
それをこの映画は描ききっているか、問題提起のボールをまっすぐ投げているかといえば、答えはノーである。
主人公は、少年時代に殺人という重罪を犯した人間なのだが、キャラクター的には凶暴で屈折したというより、「白痴」のムイシュキンに近い。保護観察人からシューズをプレゼントされ目を輝かせる表情、恋人にみせる表情、あまりに無垢、無垢すぎる。
たぶん主演のアンドリュー・ガーフィールドの演技が素晴らしすぎたのだ。愛に恵まれない無垢で弱気な少年が、唯一できた親友にそそのかされる形で犯罪に手をそめてしまい、青春時代を塀の中で過ごし、ようやく幸せにまじめに暮らそうとしていた矢先に世間のせいで突き落とされる・・・そんなかわいそうな物語になってしまった。また、ラストもいただけない。簡単に結論の出るテーマではないのだから、あのような「安易な」結末はいけない。社会派の切り口だったのに、社会派になりそこねた、ヒューマンドラマになってしまった。
同じテーマなら、東野圭吾の「手紙」のほうが優れていると思う。「BOY A」というタイトルに期待しすぎてしまったために残念だった。
ただ、役者は子役も含めてみんな素晴らしかった。